通信室

アルコール依存症からの回復 Fさん第1話

2024.04.08

<私は、こうしてアルコール依存症から回復した>

 

ケース⑥男性Fさん

 

第1話~飲酒の問題が起こる前の話~

6人兄弟の5番目としてある県の離島に生まれた。小さいころは明るくて元気が良い子どもだったと思う。小学1年の運動会でリレーのアンカーを走ったが自分がゴール目前で転んでクラスが最下位になった。その日から自信を無くし、平凡な小学生になった。足も速くなくなり成績は5段階中2と3ばかり。友達はいて、ソフトをして外でよく遊んではいたが、ずっと落ち込んでいたように思う。家が熱心なカトリック信者で自分は修道士を目指していた。修道士になるための勉強ができる本土のある私立中学を受験した。担任の先生の協力もあって好成績で無事に合格できた。寮に入っての中学校生活が始まった。「修道士を目指すのだから良い人間にならないと」と思い、生きていた。勉強も頑張っていた。この頃は何故かずっと自分が死ぬことへの恐れを抱いていた時期だった。中学3年の夏休みに強い罪悪感に襲われるようなことをしてしまい、修道士になることもあきらめ2学期に地元の中学に転校した。2度目の罪悪感・挫折だった。

中学卒業後、地元の定時制高校に進学。朝から夕方まで小学校で用務員のアルバイトをして夜は高校に通った。16歳でバイクの免許をとり、遠方の山にツーリングに行ったり、学校をサボって映画に行ったりして遊んでいた。タバコ、パチンコ、酒を高校で覚えたが戦後20年くらいの時期でそれが問題視されない世の中だった。

初めて飲んだのは17歳の頃。自分の周りの友達もちらほら飲み始めて、ある日「俺もいっちょ飲んでみよう」と思い付き、酒屋でビールの大瓶を1本買って帰り家で飲んだ。

美味いというより気持ちよいという感覚が強く、それまで抱えていた死の恐怖や挫折感が消えたような気がした。「大人はいいもん飲んでるな」と思った。それから自分で買うことは無かったが、小学校の用務の仕事帰りに先生たちから「お疲れさん、1杯飲んでいけ」と勧められ何度か飲むことがあったし「酒の中で生きていくのが男」と思うようになった。「20歳になったら堂々と飲んでやろう」と決意した。

 

[ARPスタッフのコメント]

男性Fさんのストーリーを紹介します。当院に通院歴・通院歴のない方ですが、長く飲まない生活を実践されており、「回復者からのメッセージ」を読まれている方々に希望を与えられたらと思い特別に許可を頂いて掲載させていただくことになりました。Fさんの飲み始めは時代背景や飲酒する大人と近い環境にあったことで、17歳という早い年齢ではありましたが、少量かつ飲酒の頻度は少なく、大きな問題は無かったようです。