ストレス社会と呼ばれる昨今、「こころの病」がメディアで取り上げられる機会も増え、特殊な疾患ではなく誰にでも起こりうる身近な病気としての認識は高まってきていると思われます。
しかし、いざ自分自身や身近な人に起こったら、戸惑われる方も多いのではないでしょうか。「気持ちの問題なのでは?」とか「このくらい気力で乗り切ろう」と考え、受診や相談を躊諸してしまう人も多いのかもしれません。
もちろん、自分自身で何とかしようとすることも大事なことかもしれませんが、それでも辛い状況が続くときには適切な支援や治療が必要な場合があります。
以下に当院で治療・支援を行うことができるこころの病について、その症状やサインなど代表的なものをいくつかあげています。自分自身あるいはご家族にお悩みが生じたときに、一人で抱えず気軽にご相談いただければと思います。
うつ病とは、こころと身体の調子が悪く、日常生活に支障をきたす病気です。「眠れない」「食欲がわかない」「何をしても気分が晴れない」といったことが続いている場合、うつ病の可能性もあります。
うつ病になると「物事全てがうまくいかない」「さらに悪い方向にいくだろう」といった否定的・悲観的な考えが強まりやすくなります。私たちは嫌なことがあって落ち込んでも、気持ちを切り替えて生活しているわけですが、うつ病になると気持ちの切り替えがうまくできず、「こんな自分はダメだ」とますます否定的に考え悪循環に陥りやすくなってしまいます。
チェックがつかなかった場合・・・現時点でうつ病の可能性は低いようです。心配があれば気軽にご相談ください。
1つでもチェックがついた場合、次のチェックを行ってください。
チェックが2つ以下の場合・・・現時点でうつ病の可能性は低いようです。心配があれば気軽にご相談ください。
3つ以上チェックがついた場合・・・うつ病の疑いがあります。
また家族をはじめ、友人や職場の同僚など、周囲が気づくことができる兆候もあります。「最近いつも表情が暗い」「会話をしていても反応が遅い、乏しい」など、関わりにおいて「いつもと違うな?」と感じられるときには、声をかけてあげられるとよいでしょう。勘違いや気のせいならばそれでよいことですし、「うつ」が疑われるときには専門家への相談を勧めていただければと思います。
パニック障害とは、特に身体の病気があるわけでもないのに、突然不安に襲われ動悸や呼吸困難、冷や汗、めまいなどの発作が生じ、日常生活に支障がでている状態をいいます。パニック発作は、発作時には「このまま死んでしまうかもしれない」というような恐怖と苦しみに襲われますが、様々な検査をしても体に異常はなく、発作時の苦しみも収まった後には全く消えてしまうことが特徴的です。ただし、発作を起こしたことで「また発作が起こるかもしれない」「もし起こったらどうしよう」という不安(予期不安)が生じ、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになったり、外出そのものを控えるようになったりします。
パニック障害の頻度は全人口の1.5~4.7%といわれており、決して珍しい病気ではなく、適切な治療によって改善することができます。当院においては、薬物療法に加えて臨床心理士による心理療法も行っております。気軽にご相談ください。
「いいえ」の場合・・・現時点で問題はないようです。ストレスを強めないように休息や適度な発散を心がけましょう。
「はい」の場合、次のチェックを行ってください。
チェックが3つ以下の場合・・・現時点で問題はないようです。ストレスを強めないように休息や適度な発散を心がけましょう。
4つ以上チェックがついた場合・・・パニック症の疑いがあります。
睡眠は、身体や脳の疲労を回復させてくれるものとして非常に大切なものです。よい睡眠は一日の活力につながります。その睡眠が阻害されると交感神経系の緊張状態が続き、感情が揺さぶられやすかったり、注意力が散漫になったりするなど、日常生活に様々な影響を及ぼします。しかし、日本では実に20%以上の人が不眠に悩んでいると言われています。
不眠症はその起こり方から、寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚める(早朝覚醒)、眠りが浅く寝た気がしない(熟眠困難)などに分類されます。不眠はどの年代でも起こりえますが、深い眠りの減少や中途覚醒の増加は加齢に伴う生理的な特性もあるため、年齢が高くなるほど、不眠の頻度も高くなります。
一般に7~8時間の睡眠が適度と言われることも多いですが、個人によって、また疲労の具合など状態によっても変わってくるでしょう。大切なことは日中の眠気や疲労感など活動に支障をきたさないことだといえます。慢性の不眠症は、しばしばうつ病につながりやすい場合もありますので、気軽に相談していただければと思います。
認知症は「老い」に伴う病気のひとつです。「ものや人の名前が出てこない」「ものを置き忘れる」「やったことを忘れてしまう」などの記憶や思考への影響がみられ、85歳以上の4人に1人は認知症というデータがあります。もちろん、誰にでも加齢に伴う「うっかり」は生じてくるものですが、単なる「もの忘れ」の場合は後になって思い出したり、ヒントをもらえば思い出すことが多いといえます。体験したことそのものを忘れてしまったり、ヒントがあっても思い出せない場合には認知症の可能性も考えられます。
また記憶障害だけでなく、症状が進行する中では「家事がうまくできなくなった」「お金の管理がずさんになった」「外出を嫌がる/迷子になる」などの計画性や判断力の問題も起こりやすくなります。予防的観点からも、気になるところ、ご心配がありましたら、気軽にご相談いただければと思います。
複数にわたってチェックがつく場合にはお気軽にご相談ください。
統合失調症とは、幻覚や妄想という症状が特徴的な病気です。また思考や行動、感情、意欲など多方面にわたる症状があり、日常生活や社会生活を営むうえで困難さを抱きやすい(生活の障害)ことも大きな特徴です。およそ100人に1人がかかる頻度の高い病気ですが、症状が多彩で分かりにくいこともあり、まだまだ社会の中で十分な理解を得られていない、あるいは誤解を抱かれていることも多いといえます。思春期から青年期にあたる10代後半から30代に発症することが多く、発症の頻度に男女差はほとんどみられません。
実際にはないものが見えたり聞こえたり感覚として感じられる症状
明らかに間違った内容であるのに信じてしまい、周囲が訂正しようとしても受け入れられない考え
適切に注意を働かせて会話や行動を目的の方向へまとめる働きの障害
治療としては、薬物療法と心理社会的な治療・リハビリテーションを組み合わせることが効果的であると明らかにされています。
当院においても、患者様を中心にそれを支えるご家族、そして医療スタッフがチームとなって、症状の速やかな安定と社会参加、再発の予防が図られるよう努めています。
症状が多彩にあることや自分自身で気づくことの難しさから、受診までに時間がかかることもあります。
早期治療のためにはご家族や周囲の方が気づいて受診を促すことも大切です。
「間違いがないかしっかり確認する」「手をきれいに洗いましょう」等、ミスが起こらないように確認をすることは必要なことですし、清潔を心がけることは好ましいことです。しかし、それが強まりすぎて日常生活に支障が出たり、辛くなったりしていませんか?
強迫性障害は「強迫観念」と「強迫行為」という2つの強迫症状からなります。症状が強くなると職場や学校、家庭など様々な場面で生活に支障をきたします。支障の程度は、戸締りやスイッチの確認を何度もするため出かけるのに手間取るといったものから、汚れを気にするあまり外出することそのものが難しくなるといったものまで様々です。
繰り返し、しつこく、頭にこびりついている考えや衝動やイメージで、不安や恐怖、不快感を引き起こすものです。自分の意図や信念に反して頭に浮かび、そう考えることが自分でも「馬鹿げている(不合理である)」と分かっているのに、取り払おうと思っても取り払うことが難しいものです。
強迫観念によって生じた不安や不快感を一時的に軽くするための行為で、過度の手洗いや過剰な確認など、ばかげていると分かっていても実行しないではいられない行為をいいます。
不安や苦痛が強い場合や日常生活に支障が出ている場合は速やかな受診をお勧めします
思春期は、身体的にも心理的にも非常に変化の著しい時期です。「自ら考える機会が増え、親の価値観への疑問が生じ、反発し、親の価値観から抜け出して自分自身の価値観を作り上げていく(アイデンティティを形成していく)」この時期は、成長の上で欠かせないものである反面、不安定さも多くさまざまな心の問題が表面化しやすい時期でもあります。ご心配なところ、気になる点があるときには、気軽にご相談ください。
※医療への受診ではなく、カウンセリングのみを希望される場合は、当院関連施設「心理カウンセリングルームココロプラス」までご相談ください。
冠婚葬祭や職場の歓送迎会、友人との集まりなど、私たちの生活の中で「お酒」は身近なものです。適度な飲酒は、みんなと楽しんだりコミュニケーションを円滑にしたりする潤滑油のような役割を果たしているところもあるでしょう。しかし、習慣的な大量の飲酒はアルコールへの依存を引き起こす可能性があります。最初は友人や同僚と飲むだけだったのが、毎日晩酌するようになり、お酒にだんだん耐性ができて、しだいに飲酒量が増えているとしたら注意が必要です。これがさらに進み、アルコール依存の状態になると「自分の意思でお酒をやめられない」「何を犠牲にしてでも飲みたい」という飲酒に対する強い欲求や耐性がみられるようになり、家庭的・社会的・身体的な障害が出ているにも関わらず飲酒をやめることができなくなってしまいます。
既に家族間のトラブルや仕事への支障が生じはじめて、家族が受診を勧めていても、本人は受診に積極的でないというケースもあります。本人も心のどこかで「このままではまずい」という気持ちがありますが、「飲酒をコントロールできないはずはない」と飲酒問題を否認してしまうことが多いようです。また、いったん断酒に成功してもそれを継続させることが難しいのがこの病気の特徴です。当院においては、院内の治療グループ(ARP)に加えて、同じ境遇の人たちが集まって励ましあいながら断酒の動機を維持しつづけるためのグループ(AA・断酒会)への参加も積極的に行っています。
社交不安障害
人前であがってしまう・・・
「人前であがってしまった」という経験は誰にでもあるのではないでしょうか?内気で人見知りな人、シャイな人はどこにでもいるものです。しかし、社交不安障害では人前で恥ずかしい思いをすることを恐れるあまり、社会的状況をすべて避けてしまい、仕事や学校、あるいは外出そのものが難しくなるなど社会生活に支障をきたしてしまいます。
社会的場面に対する「予期不安」と「回避」
社交不安障害の主な特徴は、社会的場面に対する「予期不安」と、そのような状況からの「回避」です。すなわち、人前で話したり、字を書いたり、食事をしたりするような状況に対し「声や手が震えてしまったらどうしようか」「人に分かって恥をかいてしまうのではない。か」という恐怖感に襲われ、そのようなことが起こりそうな場面そのものを避けてしまい日常生活に支障が出てしまっている状態です。ひどくなると「学校に行けない」「仕事ができない」「家から出れない」等の状態となる場合もあります。
社交不安障害 セルフチェックシート
この1ヶ月を振り返って・・・
どちらもあてはまらない場合は可能性は低いようです。ご心配な点があれば気軽にご相談ください。
1つ以上あてはまる場合、下記をチェックしてください。
どちらもあてはまらない場合は可能性は低いようです。ご心配な点があれば気軽にご相談ください。
1つ以上あてはまる場合で、人と接することや人前に出ることに強い苦痛を感じている方は気軽にご相談いただければと思います