通信室

アルコール依存症からの回復 Dさん第3話

2022.11.22

<私は、こうしてアルコール依存症から回復した>

 

ケース④女性 Dさん

 

第3話~入退院を繰り返していた頃~

はじめて行った精神科病院で4回くらい入退院を繰り返した。その頃は会社を辞め寮を出て実家に帰り、家業を手伝いながら生活をするようになった。一緒に住んでいる親が私に飲ませない為に酒を隠すようになっていたので家族にわからないように大量に酒を買い込んで、一人で自分の部屋に隠れて飲むのがお決まりのパターンになっていた。定期的な外来受診を勧められて予約をとっていたが、もともとの予約日には行かず、思い立ったら予約を取り直して受診する形になっていた。

入院生活中に自分と同じように入退院を繰り返している人を見て安心するようなところもあったと思う。どんなにひどい状態で入院しても退院が近づくと、飲みたくなっていた。その時の入院はアルコールと自分を物理的に切るためだけのものになっていた。アルコールが体から抜ける頃にエアコンからたくさん虫がでる幻覚も見たし、お経を読む幻聴が聞こえたことがある。

入退院を繰り返すうちに徐々に「酒を止めないといけない」と思うようになった。前の病院の最後の退院ではシアナマイド(抗酒剤)をもらっていて、服薬しながら、酒をしばらく飲まないでいることができていたが、正月明けにシアナマイドを飲み忘れた日があり、家に置いてあった日本酒を口にしてしまった。それから火がつき、お歳暮でもらったビールや焼酎を1週間飲み続けてしまう結果になってしまった。

 

[ARPスタッフのコメント]

この時期はDさんのご家族の方にもイネイブリング(依存を長引かせる世話焼き行為)がみられ、Dさんの問題にご家族が巻き込まれていた様子が窺えます。Dさん自身は「やめたいけどやめたくない」という①両価感情(相反する感情が同時に存在すること)、「私はそこまで悪くない」という②否認(病気を完全に認められない)というアルコール依存症の方が抱える心理状態にあったと予測されます。通院したり、抗酒剤を服薬したりと自力で止める努力を始められていますが、一人で飲まないことを続けるのは難しかったようです。