通信室

アルコール依存症からの回復 Fさん第9話

2024.07.29

<私は、こうしてアルコール依存症から回復した>

 

ケース⑤男性Fさん

 

第9話~アルコールをやめてから現在まで~
仕事に就いて数か月後に母が亡くなった。兄は自分の事を怒っていたが、葬式には呼んでくれた。早朝に2つ隣の県の兄の家に着いた。2年くらい完全にアルコールはやめていたが、兄に会うなり「まだ飲みよるとか!」と罵倒された。認めてもらえず悔しくて車に戻り30分一人で泣いた。家に帰る事も考えたが兄の家に戻る事にした。
朝食が用意されていて、空腹だった自分はそれをガツガツ食べた。それを見た義姉が飲んでいない事を理解し、兄に伝えてくれた。一緒に暮らし飲んでいた頃はろくに食べていなかったんだと思う。葬式の席でも親戚が自分が飲んでいない事を理解してくれた。
夜に兄から兄の子である甥を送って帰る事を頼まれた。母の葬式が兄弟・親戚に初めての埋め合わせの機会をくれたと思った。
そこから甥、姪を含め10年で10回の結婚式に呼ばれて出席した。自分は飲まずに、飲んでいる人に合わせて話を弾ませる事ができるようになっていた。これもミーティングで体験を話させてもらっているおかげだと思った。配送の仕事で県内各地のスーパーに行くが、そこで働いているおばちゃんと冗談が言えるようにもなった。
仕事は退職まで29年続けることができた。
配送の仕事は退職し、今は毎朝30分くらい歩いて教会のミサに出るのと、週5日のAAミーティング通いが生活の中心になっている。特に趣味は無くテレビでニュース、ドラマ、スポーツを観るくらいだが、退屈さは感じない。飲んで問題を繰り返していた時は罪の意識をもっていたが、今は病気と分かって楽になった。そして、AAに出て自分の体験を語る事が一生の仕事であり、自分が生まれてきた意味と感じるようになった。高齢になり車も手放したし、財産という物を持っていないが、心は落ち着いていて幸せだと感じる。

 

[ARPスタッフのコメント]
Fさんは繰り返されるアルコール依存症の症状やそこから派生する問題から何もかも失っていました。しかし、ミーティングを大事にしながらアルコールをやめ続ける中で、仕事が戻り、兄弟・親戚の信頼がもどり、新しい出会い心の落ち着きや幸せを手に入れられました。アルコール依存症は飲むたびに何かを失い続ける進行性の病気ですが、回復も進行性だといえます。