通信室

アルコール依存症からの回復 Fさん第8話

2024.07.15

<私は、こうしてアルコール依存症から回復した>

 

ケース⑤男性Fさん

 

第8話~精神科病院の最後の入院~

主治医の院長先生から「あなたも酒が恋人でしたか?」と言われた。少しカチンと来て「仕事が大事です」と反論した。あとで「自分にとって酒は神様だった」と気づいた。

8人部屋の病室で生活になった。病院でAAのミーティングが週に1回、病院のミーティングが週2回、断酒会例会が月に1回開催されていた。当時ミーティングがいやで同部屋の人に引っ張って連れて行かれていた。資料(ハンドブック第3章)を読むと汗ダラダラ、体験談を話させられるのも嫌だった。ある日関東の施設(マック)から一人の女性メンバーが自分の住む県に同じような施設を作りに来ていた。自分が入院していた病院にメッセージに来ていた。

内容は覚えていないが1時間メモも何も見ずにしゃべり続けた姿がかっこ良いと思った。「俺もあんな風になりたい。」と思った。

退院してその女性が開いた施設に行くことにした。午前に1回、午後に1回施設内のミーティング。夜にはAAがメッセージに来ていた。施設に金銭的援助をしてもらいながら毎日1年半通っていた。最後の半年は施設からの援助を打ち切り、施設で職員として働き、給料をもらいながら活動していた。それから職業安定所に通い欠員が出た食品配送の会社の2カ月のアルバイトに応募した。

2か月後社長から「正社員にならないか」と声をかけてもらった。1人正社員を解雇して自分を雇うという背景がある事を知り、良い話だが心苦しいところがあった。東京の女性メンバーに相談してみた。話を聴いてもらい、背中を押してもらい、正社員の話を受ける事にした。

朝3時起き、4時始業、5時に配送開始。終業は14時だが17時まで働く事も多かった。そこから家に帰ってひと休みしてミーティングに通った。そんな生活が続けられていて「自分は意志が強い」と思うようになった。同時に「酒が止まらないのは意志ではなく病気のせい」だということが分かった。

[ARPスタッフのコメント]

アルコールの問題のある患者さんたちと話してよく思うのですが(私見ですが)、仕事熱心であられたり、優れた技能を持っておられたり、人への深い配慮ができられたり・・・そんな人が多いような印象を受けます。アルコール依存症は意思ではコントロールができない病気であることが多くの方に伝わって、偏見がなくなってほしいと願っています。