通信室

アルコール依存症からの回復 Fさん第7話

2024.07.01

<私は、こうしてアルコール依存症から回復した>

 

ケース⑤男性Fさん

 

第7話~どん底②~

数か月後友人が亡くなった。兄から「(友人が)病院で亡くなった。お前の事を心配していた」と聞いた。葬儀に行って涙が流れてはいたが、感情がついてこなかった。

それからまた兄貴の家で飲んで何か月かやめて、また飲んでというのを繰り返した。酒を自力で切ると眠れなくなるが、10日くらいで7~8時間眠れるようになる。そこまでいけば飲まなくてすむが、年々酒が切れなくなってきた。兄貴の家から職業訓練校に通わせてもらい建設機械と大型特殊の免許を取りに行った。酒を飲みながらもなんとか免許は取れたが、兄の家を追い出されて故郷の姉の家に行くことになった。

地元の社員寮を持つ会社にアルバイトで入れられた。3か月飲まずにいたが兄が自分を差し置いて従兄弟の結婚の世話をしていると聞いて、腹が立って8万円持って繁華街に飲みに行った。

起きたら朝5時の路上で所持金は0円になっていた。通勤の人が多いところに移動し知り合いを探すことにした。中学の担任を見つけ「先生お金を貸してください」とお願いした。200円貸してくれそれを持って180円のワンカップを買って飲み、残りの20円で姉に電話をかけた。「どうにもならない」という感じだった。

姉のうちに戻ったが酒が切れなくなった。「兄弟に迷惑をかけたくない」とは思っていた。姉もいろいろ調べてくれていて、「1杯でも飲んだらダメ」と知っていた。飲んで外に出てケガをして警察に連れ帰られた。

姉がアルコールの治療をしている病院に連れて行ってくれた。シアナマイドをもらって通院が始まったが、飲んで次の日に入院になった。

 

[ARPスタッフのコメント]

以前(10年ほど前でしょうか)は「アルコール依存症は底つきになってから」という言葉がスタッフのなかでよく聞かれていました。個人的にその言葉にはずっと抵抗がありました。病院のミーティングの中であるメンバーの方が「底に落ちて、地面が足についてやっと歩けるようになる。」と話すのを聞いて少し前向きなイメージを持てましたが、やはり底に着く前、家族や友人とのつながり、仕事、車の免許、いろんなものがあるうちに飲まない方向に進んでほしいと願っています。