通信室

アルコール依存症からの回復 Fさん第6話

2024.06.17

ケース⑤男性Fさん

 

第6話~どん底①~

辞めた会社で一緒に働いていた知人が運送会社の社長をしていて、その人に連絡し雇ってもらう事になった。自分のアルコールの問題は知ってくれていて「2年くらい飲まないで頑張ってくれよ」と言われた。1か月でまた飲むようになっていた。金が足りなくなっていて、「給料日に返せばいいさ」と考え会社の金庫から2万円抜いて飲みに出た。気づいたら警察の留置所だった。警察官が職場に電話を掛けたら「昨日までは雇っていました」と言われたと聞いた。クビになっていた。出所後すぐ兄に電話し、振り込まれていた給料の8万円とバッグ2つを持って新幹線に乗った。

駅には家族全員で迎えに来てくれていた。新幹線では飲まなかった。兄嫁に「1杯だけ飲ませて」とお願いし駅の売店で1杯飲んだ。兄の家について「タバコを買いに行く」と家を出たが子ども達がついてきて酒を買えなかった。1部屋使わせてもらっていたが気持ちが落ち着かず体全体がガタガタ震えていた。その日の夜は動物園のクマみたいに部屋の中をウロウロしていた。

2カ月くらい飲まずにいたが、地元の同級生がガンで入院していると聞いて、タクシーで2万円かけて病院に向かった。兄の監視の目から離れ、移動の時に飲んでいた。

アルコールが入った状態でお見舞いに行った。

 

[ARPスタッフのコメント]

「アルコール依存症の人のイメージは?」と質問されて多くの人が浮かびやすいもの一つとして、「手が震えている」というのが多く挙げられます。ずっと震えているわけではなく、体からアルコールが抜けたときに起こる症状で「離脱症状」と呼ばれます。手が震えるだけでなく、Fさんのように全身が震える方、幻覚が見える方、尿が出なくなる方などもいらっしゃるようで、症状はさまざまです。